ターンテーブル 寒い日が続いたので、ラベルに美しい踊り子のプリントがしてあるレコードをターンテーブルに載せ、聴いてみることにした。 しかしなかなか音が鳴らない。 濃いブルーを背景に、踊り子はぐるぐる回っている。 時折かすかなホーンの音色が伝わってくる気もするが、どこから鳴ってどこへ響くのかが分からない。 針はすでに盤の後半にさしかかっていて、なおも踊り子はグルグル回っている。 プロでも流石に目が回るだろうな、と考えていたら、彼女、プリマドンナの姿勢のままピョコリと盤上にとび出し、円状のラベルを舞台に、跳びまわって踊りだした。 回転式のステージは濃いブルーの一色だったので、深い夜が執拗に巡っているようで、薄いホーンの音がよく似合う。 踊り子の小さなショウを眺めているうちに、針がスーッと中央のラベル部にたどり着き、片面が終わった。 とたん、ラベル内のみで律儀に踊っていた女は、渡し舟に飛び乗るように、針の接続されたアームの先端部にピョコリと移り、アームの花道をクルクルと渡ってどこかへ行ってしまった。 後には、舞台だけが真夜中の深さで回り続けていた。 |